インサイドセールス組織の立ち上げに必要な具体的戦略
近年、サブスクリプション型ビジネスモデルの台頭や、LTVの向上、営業効率化を目的とする背景から、インサイドセールスへの注目が高まっています。
Google Trendsにおける「インサイドセールス」の検索トレンドも、ここ10年で何倍にも拡大しており、多くのユーザーがインサイドセールスと検索していることが明らかになっています。
実際に、弊社にいただくご相談内容も、以前は「営業効率を上げたい」漠然としたものが多い印象でしたが、最近は具体的なインサイドセールスの立ち上げ・設置を検討しているという企業様からのご相談が増えてまいりました。
その上で、今回の記事では、インサイドセールスの立ち上げを検討するために必要な戦略の整理手順、具体的な戦略の考え方、手法についてお伝えしていきます。
今すぐ、インサイドセールスの立ち上げについて相談をしたい方は、こちらよりご連絡ください。
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インサイドセールスとは
そもそもインサイドセールスとは、「営業プロセス全体の生産性向上と最適化のために、社内で営業活動を行う職種」です。
扱う商材やサービスによっては、インサイドセールスが見込み顧客の興味関心の育成といったナーチャリングから商談の創出までを担当する場合や、受注まで担当する場合など担う役割は様々ですが、営業プロセス全体の生産性向上と最適化のために、社内で営業活動を行う職種であることは共通しています。
インサイドセールスを導入し、営業活動の分業を行うことで効果的な商談創出プロセスの構築が可能になります。
インサイドセールスが担う役割や注目を集める背景、市場感をまとめた記事もございますのでご覧ください。>【徹底解説!図解あり】インサイドセールスとは?役割や導入状況、成果指標を解説
アンゾフの成長マトリクス
まず初めに、インサイドセールスの戦略の方向性を見極めるべく、アンゾフの成長マトリクスをもとに、成長戦略を整理していきます。
アンゾフの成長マトリクスとは、イゴール・アンゾフ(1918-2002)氏によって提唱された、事業の成長・拡大を図る際に用いられるマトリクスのことです。事業の成長を「製品」と「市場」の2軸におき、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けて整理を行います。
今回の記事では、既存市場をターゲットをよく知っている市場、新規市場をあまり知見のない未知の市場、既存製品を市場の認知度が高い製品、新規製品を市場の認知度が低い製品とします。
戦略の整理手順
下記の1~3整理手順に沿って、戦略を整理していきます。
- 各プロダクトがどの象限に属していて、どう成長させたいかの成長戦略の検討
- それぞれの成長戦略に対して営業リソースが割けるのかの検討
- 流入リードが、どの成長戦略に適したリードなのか、そもそもどの象限に当てはまるリードなのか?の可視化とその検討
次に、1~3を検討した上で、①~④のどの領域をどのように成長させたいかを整理していきましょう。
例えば、これまで①の既存市場×既存製品で活動をしていた企業にとっては、この①の領域があとどれほど拡大できるのか?という軸と、新規領域(②や④)をどのように成長させるか、その部分にどれほどの営業リソースを割けるか?といったことが重要になっていきます。
この①の既存市場×既存製品の領域においては、自社製品の認知度があり、ターゲット像も明確化しているため、すでに勝ちパターンを把握出来ている状況ではないでしょうか。さらに①の領域で成長をしていくには、その勝ちパターンに当てはまるリードの獲得とその効率化、及び既存顧客向けの囲い込み戦略(カスタマーサクセス)が重要になります。
一方、②(新規市場×既存製品)、③(既存市場×新規製品)、④(新規市場×新規製品)の領域は、そもそも勝ちパターンが見え切っていないので、勝ちパターンを見つける活動や、市場認知向上、イメージチェンジ(パーセプションチェンジ)、さらには戦略的に特定の業界や企業規模といった特定セグメントへの集中的な営業が必要になります。
成長戦略に対応するインサイドセールスの戦略
成長マトリクス上での戦略の整理ができたら、次は、成長戦略に対応するインサイドセールスの戦略はなにか?について検討していきましょう。
既存市場拡大のための戦略
①市場浸透(既存市場×既存製品)の領域向けの市場浸透戦略
①(既存市場×既存製品)の領域向けに取る戦略は、「市場浸透戦略」と呼ばれています。
簡単に言えば、既存市場で既に販売している商品やサービスを拡大させることです。
具体的には、「顧客への購買個数を増やす」「顧客1人あたりの購入単価を上げる」「リピート顧客を増やす」「購入頻、度を上げる」のような手法を行います。
本来のインサイドセールスは、顧客育成や商談・案件の創出の役割を担うことが多く、顧客へ商品の複数購入や上位価格帯の商品購入を促すアップセルや、関連する商品の購入を促すクロスセルを行う場合には、「カスタマーサクセス」と呼ばれることもあります。
①市場浸透(既存市場×既存製品)の領域の拡大を目的とした、既存顧客向けカスタマーサクセス(アップセル、クロスセル)では、製品知識や既存顧客とのリレーション、顧客満足、成功支援が重要になります。実際に活動を行う際には、営業工数を最適化するために、工数をかけるべき相手とそうでない相手を明確に分類し、WEBコンテンツやツールといった人的工数がかからない方法での顧客とのコミュニケーション手法の採用も検討すべきでしょう。
また、①市場浸透(既存市場×既存製品)の領域では、既存顧客と似た属性をもつ新規リードの獲得も重要になります。基本的には、これまでの勝ちパターンに沿ったリードの獲得量が必要です。
これまでの取引の中で、自社の強みが発揮できる顧客を把握し、既存顧客と似た属性(企業規模や業界など)を持つ企業に狙いを定め、活動をしていきます。顧客との商談の際には、既存顧客での導入事例や実績も強みになります。
ターゲットを設定したABM戦略
②(新規市場×既存製品)の領域向けに取る戦略は、新市場開拓戦略
③(既存市場×新規製品)の領域向けに取る戦略は、新商品開発戦略 と呼ばれています。
上記2つの領域を攻略するために、ABM戦略を行うことも有効です。
ABMとは、Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)の頭文字を取ったもので、BtoB企業において「自社にとって価値の高い顧客を選別して、顧客に合わせた最適なアプローチをする」マーケティング手法のことを意味します。
②新市場開拓(新規市場×既存製品)の領域向けのABM戦略
新規市場への展開は、ターゲットとなる市場に近しい市場で、成果を挙げている既存顧客の事例を活用することが有効です。特に、既存顧客の事業規模や先進的な取り組みが、ターゲット市場と似ている場合には、より興味を持ってもらいやすいでしょう。
③新商品開発(既存市場×新規製品)の領域向けのABM戦略
新製品の多くは、既存製品を補完するものや代替となるものです。すでに市場においてある程度の知名度があるのであれば、既存の顧客に新製品を購入してもらうことで、新商品が普及し、収益を増やす効果が期待できます。
ABMは、取引のある企業群を中心にプロモーション展開することを得意としており、既存製品の補完や代替をする新製品の販売には効果的だと言えるでしょう。
実際にインサイドセールスがABM戦略を担う際には、特定のリストを支給し、明確な受注目標を示して商談見込み獲得を行うのはもちろんですが、ヒアリングの中で顧客から引き出せた情報もしっかりと蓄積して、次の施策に繋がる活動にしていきましょう。
市場・製品の把握を目的とした仮説検証
②新市場開拓(新規市場×既存製品)、新商品開発(既存市場×新規製品)、④多角化(既存市場×新規製品)領域の攻略においては、ターゲットリード、コンテンツ、営業シナリオの仮説検証を行いましょう。
ターゲット像、コンテンツ、営業シナリオの仮説をたて、それがあっているか否かを、インサイドセールスを用いて、市場からフィードバックを得ていくのがよいです。
インサイドセールスの戦略を実現するための手法の検討
①~④の戦略の整理と、インサイドセールス戦略の方向性が決まったら、最後にインサイドセールスの手法を検討しましょう。
クロージングを前提としたインサイドセールス(営業行為のインサイドセールス化)
遠隔会議ツール等を活用して、非訪問の営業を促進するやり方です。①の既存製品×既存市場では、いかに訪問に必要な外出時間を削減し商談実施効率を高めるかが重要です。特に、クロージングまで訪問せずにできるようになれば、かなりの工数削減が可能になります。もちろん一方で、製品特性上、訪問が必要なモノもあるため、すべてに当てはまるわけではありません。
営業との分業を前提としたインサイドセールス
特に製品の専門性が高く、技術営業や開発者、サービス提供者といった担当の説明が必要な製品の場合、リードタイムはおのずと長くなり、セールスに求められる知見のレベルも高くなりがちです。
その場合、理想の営業勝ちパターンにつながりやすいニーズと顧客の状態(検討状態、企業属性、担当属性)がどんなものか?を見定め、それに該当するリードを見つける、或いはそこまでの状態に育成することをインサイドセールスが担当する分業型のインサイドセールスが良いでしょう。
この場合の育成は、勝ちパターンに該当するリードを受注までに持っていくという意味ではなく、ニーズや状態がよくわからないリードや勝ちパターンに該当しないリードをできる限り勝ちパターンに近づけたり、勝ちパターンを見い出せるよう活動を行うという意味です。
営業担当も、事前に商談に必要な事前情報をインサイドセールスが受け取ることで、商談準備をスムーズに行うことが出来ます。
顧客の情報把握や市場の分析を目的としたインサイドセールス
あまり知見の無い未知の新規市場かつ市場での認知度が低い製品の場合には、市場・顧客理解を進めるところから始める必要があります。
この場合、インサイドセールスと言うよりも、市場調査の側面が強いかもしれませんが、その過程の中で、市場・顧客の課題は何か?どのような製品であれば、独自性を発揮できそうか?等のことが把握出来ていきます。
②新市場開拓(新規市場×既存製品)、新商品開発(既存市場×新規製品)、④多角化(既存市場×新規製品)領域の攻略においては、ターゲットリード、コンテンツ、営業シナリオの仮説検証を行い、インサイドセールスを用いて市場からフィードバックを得ていきましょう。
以上が、成長戦略からインサイドセールスの手法までの検討手順です。
その他にも各社に沿ったインサイドセールスの形がありますが、今回は3つに絞ってインサイドセールスの手法をご紹介させていただきました。
まとめ
今回の記事では、インサイドセールスの立ち上げを検討するために必要な戦略の整理手順、具体的な戦略の考え方、手法についてお伝えしていきました。
文章では説明しきれない部分の多々ございますので、
インサイドセールスの立ち上げや運用で、さらに具体的な相談をしたい、
話を聞いてみたいとお考えのご担当者様は、こちらよりお気兼ねなくご連絡くださいませ。