【図解・具体例あり】LTVとは?計算方法・最大化・向上する5つの方法
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは
LTVとは「Life Time Value」の略称で、日本では「顧客生涯価値」と呼ばれています。
LTVは、ある顧客が企業との取引期間を通じて、企業にどれだけの利益をもたらしたかを指す言葉であり、顧客単価・粗利率・購買頻度・取引期間・顧客の獲得や維持に掛かるコストをもとに算出されます。
LTVが重要視されるようになった背景には、市場の飽和が挙げられます。
製品やサービスを導入する企業が増え続ける成長期の市場であれば、新規顧客を増やすことで売上げを向上させることができます。そのため、企業は魅力的な製品やサービスを作って、プロモーションを行い、認知・訴求を行うことで売上げの拡大を図ること出来ました。
しかし、既に商品が飽和している成熟期の市場では、新規顧客を獲得することは難しくなります。そのため、顧客の定着化(リピーターを増やして、顧客ごとの売上げを伸ばす)ことが重要となり、「顧客生涯価値」を意味するLTVが注目を集めているのです。
今すぐLTV向上のポイントを知りたい方はこちらの資料もご参考ください。
LTV向上お役立ちガイドでは、LTVを構成する「顧客単価、粗利率、購買頻度、取引期間、顧客の獲得・維持コスト」の各々を改善する施策をご紹介しています。
目次[非表示]
- 1.LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは
- 2.LTVの算出方法・計算式
- 2.1.LTVの算出方法・計算式の具体例1
- 2.2.LTVの算出方法・計算式の具体例2
- 3.LTVを最大化する5つの方法
- 3.1.顧客単価を向上させる方法
- 3.2.粗利率を向上させる方法
- 3.3.購買頻度を向上させる方法
- 3.3.1.機能的陳腐化
- 3.3.2.心理的陳腐化
- 3.3.3.利用範囲(時間帯)の拡大
- 3.3.4.利用範囲(場所)の拡大
- 3.3.5.新たなイベントの企画
- 3.4.取引期間を延ばす方法
- 3.4.1.顧客満足度を高める
- 3.4.2.最低契約期間を設ける
- 3.5.顧客の獲得・維持コストを下げる
- 3.5.1.顧客の獲得・維持コストを下げることを考える際に、知っておきたい「1:5の法則」
- 3.5.2.広告施策(LP:ランディングページ)の見直し
- 3.5.3.ウェビナーの実施
- 3.5.4.メールマガジン(メルマガ)の配信
- 4.まとめ
LTVの算出方法・計算式
LTVは取引期間中に顧客から得られる利益の総額で、
「(顧客単価)×(粗利率)×(購買頻度)×(取引期間)-(顧客の獲得・維持コスト)」という計算式で求めることができます。
・顧客単価_1回の購買によって顧客が支払う金額
・粗利率_売上額に対する粗利額(売上-売上原価)の割合 粗利÷売上=粗利率
・購買頻度_一定期間に顧客が購買活動を行う頻度
・取引期間_顧客が継続して取引(購買活動)を行う期間
・顧客の獲得・維持コスト_新規顧客を獲得するのにかかる費用、
顧客を維持するのにかかる費用の合算)
では、具体的なLTVの算出方法をお伝えしていきます。
LTVの算出方法・計算式の具体例1
ある企業Aが月額20万円(粗利率20%)のサイト運用サービスを3年間利用したとします。顧客の獲得・維持コストは、新規顧客獲得に掛けた広告費や問い合わせへの対応、定期的なフォローに掛かった人件費などが該当し、企業Aの獲得・維持コストは、30万円とします。各項目の値は以下の通りです。
では、企業AのLTVはいくらになるのでしょうか?計算式に当てはめると、
LTV=(顧客単価)×(粗利率)×(購買頻度)×(取引期間)-(顧客の獲得・維持コスト)
LTV=(20万円)×(20%=0.2)×(12回/年)×(3年)-(30万円)=114万円
となり、企業AのLTV(取引期間中に顧客から得られる利益の総額)は114万円となります。
LTVの算出方法・計算式の具体例2
ある企業Bが1回80万円の研修サービス(粗利率60%)を半年に1回、5年間利用したとします。顧客の獲得・維持コストは、新規顧客獲得に掛けた広告費や問い合わせへの対応、定期的なフォローに掛かった人件費などが該当し、企業Bの獲得・維持コストは、50万円とします。各項目の値は以下の通りです。
では、企業BのLTVを計算すると、
LTV=(顧客単価)×(粗利率)×(購買頻度)×(取引期間)-(顧客の獲得・維持コスト)
LTV=(80万円)×(60%=0.6)×(2回/年)×(5年)-(50万円)=430万円
となり、企業BのLTV(取引期間中に顧客から得られる利益の総額)は430万円となります。
こちらの資料では、具体例をさらに2つご紹介しております。
LTVを最大化する5つの方法
では、実際にLTVをどのように高めていくのでしょうか。
LTVは、(顧客単価)×(粗利率)×(購買頻度)×(取引期間)-(顧客の獲得・維持コスト)の計算式で表される通り、
- 顧客単価を高める
- 粗利率を高める
- 購買頻度を高める
- 取引期間を延ばす
- 顧客の獲得・維持コストを下げる
の各項目を改善することでLTVの最大化を達成することが出来ます。
顧客単価を向上させる方法
顧客単価を向上させるには、一般的に3つの方法があります。
- 商材・サービスの値上げをする
- アップセル
- クロスセル
実際には、単に商品・サービスの値上げを行うだけでは、顧客に不満や不安をいだかせてしまう可能性もあり、顧客を失いかねません。
そのため、値上げを進める際には、一斉に値上げをするという選択肢だけでなく、商材・サービスの価値共有がしっかりと出来ている顧客から値上げを行ったり、逆に、新規の顧客には、値上げした値段で販売を行い、既存顧客は一旦値上げを待って、先行者利益を与え、愛着度向上を図るなど、自社と顧客の状況によって、判断を行いましょう。
また、より付加価値の高い商品・サービスを開発し、同一商材の追加購入・アップグレードでの単価向上を狙うアップセルや、現在お客様が利用している製品・サービスと関わりがあり、利用することでさらに顧客へ貢献が出来る別商材を開発し販売するクロスセルも有効です。
アップセルとは、
現在利用している商品・サービスのグレードアップや上位商品の購入、同じ商材を追加購入をしてもらうことを意味します。
クロスセルとは、
現在利用している商品・サービスとは別の商材を併せて購入してもらうことを意味します。
粗利率を向上させる方法
粗利率=利益(売上げー原価・コスト)÷ 売上げ で求めることが出来ます。
粗利率の向上は、売上げを高め、掛かる費用(原価・コスト)を下げることで実現します。
10,000円の商品を販売したとき、その商品の作成に掛かった材料や人件費(原価・コスト)が4,000円であれば、粗利率(%)=(10,000ー4,000)÷10,000 × 100 =60% になります。
粗利率を高めるには、売上げを上げると同時に、原価・コストを下げることも重要です。
もちろん、原価・コストを下げたことで、商品やサービスの品質が低下してしまっては、顧客に不満を与え、顧客の流出や購入頻度の低下につながってしまします。そのため、LTVを最大化して利益を増やすことを目的として、コスト削減をする場合は十分に気をつけましょう。
購買頻度を向上させる方法
購買頻度を向上させるには、一般的に、機能的陳腐化・心理的陳腐化・利用範囲(時間帯)の拡大・利用範囲(場所)の拡大・新たなイベントの企画の5つの方法があります。
機能的陳腐化
機能的陳腐化とは、新たな機能や性能の出現により、それまでに存在した機能の目新しさがなくなったり、時代遅れの印象がついたりして価値が減ることです。
例えば、健康への意識が強く毎日体重計に乗って、自身の体重を計測しているAさんがいるとします。
ある日、体脂肪率や骨密度、筋肉量が計測できる機能を備えた新商品の体重計が販売されたとします。自身の健康に気を使うAさんは、新商品に魅力を感じ、すぐに購入しました。
これまで使用していた(体重を測れるだけの)体重計は時代遅れに感じ、新たな機能を備えた新商品は、Aさんの目にはとても魅力的に思えたのです。
このように、新たな機能や性能を備えた新商品(体脂肪や骨密度、筋肉量が計測できる機能を備えた体重計)の出現により、それまでに存在した機能の目新しさがなくなったり、時代遅れの印象がついたりして価値が減ることを機能的陳腐化といいます。
心理的陳腐化
心理的陳腐化とは、特に機能面では変わらないものの、表面的なデザインや見た目を新しくすることで、それまでに存在した製品を「時代遅れ」と認識させることです。
例えば、衣服は素材や色味が変わらずとも、デザインを新たなものにすることで流行を作り、既存の衣服を「時代遅れ」と認識させる場合があります。毎シーズン新たな衣服が販売されるため、まだ着用できるにもかかわらず、「流行に追いつこう」とシーズンごとにまだ着れる服を捨てる人も少なくありません。
このように、特に機能面では変わらないものの、表面的なデザインや見た目を新しくすることで、それまでに存在した製品を「時代遅れ」と認識させることを心理的陳腐化といいます。
利用範囲(時間帯)の拡大
商品やサービスを利用する時間帯を広げることも、購買頻度を高めるひとつの手段です。
例えば、夕方や夜での利用が多い場合は、朝の利用訴求を行い購買頻度を高めます。
また、月末月初での利用が多い経理サービスの場合は、新たな機能を追加して、月末月初以外でも利用してもらえるようにします。
1日でいえば、朝・昼・晩、1年でいえば春夏秋冬と利用範囲(時間帯)を広げ、購買頻度を高めていきましょう。
利用範囲(場所)の拡大
商品やサービスを利用する場所を広げることも、購買頻度を高めるひとつの手段です。
例えば、お金の引き出しや預け入れを行うATMは、それまで銀行だけでしかできなかったお金の管理を、様々な場所で利用できるようにして、購買(利用)頻度を高めることに成功しました。
また、SonyのWALKMAN(ウォークマン)は、テープレコーダーを利用して家で音楽を聞くことが一般的だった当時、「音楽を外に持ち歩く」という新しいスタイルを確立し、一世を風靡しました。利用範囲を家の中から、家の外(どんな場所でも)に広げ、購買頻度を高めたのです。
新たなイベントの企画
自社の製品やサービスと結び付くイベントを企画することも、購買頻度を高めるひとつの手段です。
例えば、毎月29日は「肉の日」として、焼肉店や精肉店でイベントが行われたり、毎月22日は「ショートケーキの日」(カレンダー上で、22日の上は必ず15(いちご)日のため)として、ショートケーキがお得になるイベントが開催されています。
また、母の日では赤のカーネーション、クリスマスではプレゼントやケーキ、バレンタインデーではチョコレート、土用の丑の日ではうなぎのように、イベントと結び付きのある商品を作ることで、購買頻度を高めることが出来ます。
取引期間を延ばす方法
取引期間を延ばすには、一般的に2つの方法があります。
- 顧客満足度を高める
- 最低契約期間を設ける
顧客満足度を高める
当たり前ですが、顧客の抱える悩みや課題を解決し続けることで顧客満足度を高め、取引期間を延ばすことが出来ます。
顧客満足度を高めるには、既に表に現れている(顧客が感じている)顕在的な悩み・課題を解決するだけでは、充分とは言えません。まだ顧客自身が気付いていない潜在的な悩み・課題を解決し、本質的な問題の解決にまで踏み込むことも重要です。
現在は、顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス」という職種・役割も生まれています。
カスタマーサクセスの意味や役割、注目を集める背景について詳細を知りたい方は、こちらからご覧ください。
→カスタマーサクセス(CS)とは?意味や役割、注目を集める背景を解説!
最低契約期間を設ける
最低契約期間を設けることで、その期間中は確実に売上げを得ることが出来ます。
しかし、最低契約期間を設けるこの施策は、顧客が契約期間内に商品やサービスの魅力を感じることが出来なければ、最低契約期間後すぐに顧客が離れてしまう可能性があります。
やはり、取引期間を延ばす根本的な施策としては、顧客満足度を高め、自社の製品やサービスに価値を感じてもらい、最終的には愛着をもってもらう(ファンになってもらう)ことが必要です。
顧客の獲得・維持コストを下げる
顧客の獲得・維持コストを下げることを考える際に、知っておきたい「1:5の法則」はご存じでしょうか。
顧客の獲得・維持コストを下げることを考える際に、知っておきたい「1:5の法則」
「1:5の法則」とは、アメリカのコンサルティング企業であるBain & Company社の名誉ディレクター、フレデリック・F・ライクヘルド氏が提唱した「新規顧客に販売するコストは、既存顧客へ販売するコストの5倍かかる」という法則です。
法人向け商材(BtoB)の場合、既存顧客と取引する際のコストとしては、今までの条件提示と価格交渉、契約が想定されます。対して新規顧客の場合には、広告・プロモーション、見込み顧客の精査、信頼関係の構築、アポイントメント設定、商品説明、商談といった工程を経て、価格交渉、契約に至ります。
つまり、時間・労力という点で、新規獲得コストは既存顧客よりも多くのコストが掛かり、同じコストであれば、既存顧客の維持にかけたほうが利益は向上するということです。なお、コストが5倍かかるの、「5倍」という数字は、ライクヘルド氏の経験則から導かれた数字です。
もちろん、話はそう単純ではなく、企業にとっては新規顧客の獲得も重要な課題であることには変わりありません。
ただし、限られた予算や人材といったリソースを効果的に配分しようとするなら、中長期的な戦略にもとづき、既存顧客の維持と新規顧客の獲得のバランスを考慮した上で、計画的に施策を実行していくことが重要です。
そして、新規顧客の獲得・維持コストを下げる方法はさまざまです。
大切なのは数ある方法の中から、自社にマッチした方法を選ぶことです。
自社の製品・サービスやリソースによって、出来る方法は異なり、顧客の属性によっても、効果のでる方法は異なります。
例えば、まだ世にない商品を生みだし、製品のことも、企業のことも知られていない企業であれば、自社と共通しそうな顧客を持つ企業と共催ウェビナーを実施して、リードを獲得することが顧客の獲得コストを下げる近道かもしれません。
成長期の市場であれば、テレビや新聞などのマス広告を使用し、製品・自社の認知度を一気に高めて、アピールをすることが有効な場合もあります。
新規顧客の獲得・維持コストを下げる方法の中で、どれが自社に合うかはそれぞれ異なり、確実に成功する方法はありません。
試行錯誤を繰り返しながら、自社に最適な方法を探しましょう。
顧客の獲得・維持コストに影響を与える要素を整理した上で、数ある顧客の獲得・維持コストを下げる方法の中で、3つご紹介します。
広告施策(LP:ランディングページ)の見直し
新規顧客の獲得方法としてインターネット広告を配信しつつも、CVが生まれていないのであれば、LP(広告のリンク先)の見直しを行いましょう。
LPとは、集客に特化した縦長の1枚のページのことです。LPには利用してもらいたい商品に関して記載し、サービスと関係がない情報は一切書かず、ページの訪問者に商品の強みをより詳しく理解してもらうようにしましょう。
場合によっては、ユーザーや企業の属性ごとに分けたLPを作成することも、CVの向上には有効です。ユーザーに分かりやすく必要な情報をまとめたLPを作ることで、CVを増やし、結果的に顧客の獲得コストを抑えることが出来ます。
ウェビナーの実施
自社の商品やサービスに関係のあるウェビナーを開催することで、温度感の高い見込み顧客を獲得することが出来ます。
実施するのは配信機器や投影資料の準備が必要になりますが、現在は低価格で利用できるウェビナー配信ツールも多く存在しています。
1対1での対応では負担に感じてしまう場合も、集団で参加するウェビナーでは、比較的気軽に参加してもらえることがあります。
新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客や見込み顧客の育成(ナーチャリング)施策としても、ウェビナーは有効な手段です。
メールマガジン(メルマガ)の配信
既存顧客の維持のために、メルマガを利用するのも有効です。
商品やサービスを利用してもらって終わりにするのではなく、利用開始後も商品のバージョンアップや新規機能の実装、新商品の紹介を行うことで、顧客の興味・関心の育成が可能です。
弊社では、見込み顧客と既存顧客へのメルマガ配信内容を分けています。
見込み顧客への配信内容であれば、興味関心の育成が目的となるため、自社のサービスと関わりのある時事的な内容や、製品・サービスを導入することでお客様にどんなメリットや変化があるのかを訴求していきます。
既存顧客への配信内容であれば、愛着度の向上や顧客の成功が目的となるため、他社の取り組みを事例化して、自組織の成功に活かしてもらえる内容や、製品・サービスのバージョンアップ、運用時の詳細資料などを配信し、お客様がより弊社の製品・サービスを上手に活用してもらえるようにしています。
自社製品・サービスに対して、顧客の興味関心・満足度が高い状態であれば、自ずと獲得・維持コストは下がっていきます。まずは、顧客の役に立つ情報提供を行い、自社への愛着を高めていきましょう。
まとめ
今回の記事では、日本語で「顧客生涯価値」を意味するLTV(Life Time Value)の計算方法や具体例、LTVを最大化する5つの方法についてお伝えいたしました。
LTVを高める最大の方法は、「顧客の課題を解決する商品を開発し、顧客の愛着度を高める」ことです。自社の商品・サービスを長期間にわたって安定的に利用してくれる顧客を大切にしていきましょう。