市場をどう見るか?事業創成期における危険な3つの思い込み
目次[非表示]
- 1.靴のセールスマンから学べること
- 2.事業を失敗に導く3つの思い込み
- 2.1. 自分で考えた仮説に関する思い込み
- 2.2.一部で起きた現場体験に関する思い込み
- 2.3.③特定の前提条件に関する思い込み
- 3.客観性を持つ勇気
靴のセールスマンから学べること
私は19歳の時に初めての営業の仕事に就いた。
これが、(広い意味では)人生で初めての「マーケティングに関わる仕事」と言えるだろう。
売る商品は英会話のカセット。その会社は外資系の会社だったため、営業に関しては当時最先端の様々な考え方に触れることができた。
その一つが、その会社ではことあるごとに朝礼で語られていた「ポジティブシンキング」である。見ず知らずの人に初対面で40万くらいする英会話のカセットを売ってしまうという、メンタル的にも大変な仕事なので、あえてそう言った文化を創出しようとしていたのだと思う。
一般的にも有名な話かもしれないが、その時によく語られていた話に「靴のセールスマン」の話がある。靴を売ろうとしてアフリカに渡ったセールスマンが、アフリカ人が誰も靴を履いていない状況をみて、どう思ったかという話である。
アフリカでは誰も靴を履いていないのだからこんなところで靴が売れるはずがないと思ったセールスマン。一方では、アフリカでは誰も靴を履いていないのだから、もしみんなが靴を履くようになったらすごいマーケットになると考えたセールスマン。
この原稿を読んでいるあなたはどちらの考え方をするタイプだろう?
この話のオチでは、後者のセールスマンが成功して大金持ちになる。
日々起こる営業状況にすぐにネガティブな発想になってしまい、行動する勇気を持てなくなる営業マンに対して、ポジティブな思考によってアクションを促すための挿話として語られていたと思う。
この挿話からも読み取れるように、マーケターとして「市場をどう捉えるか」はとても大切である。
まだ商品とマーケットの間の価値共有やコミュニケーションの成功パターンが確立されていない状態で行うマーケティングの場合、市場との対話の中から仮設検証を繰り返して成功パターンを模索していくことになる。
その時に現場から上がってくる情報(見込み顧客とのタッチポイントだ)をどう見るか、それを元にどんな判断をしていくかが事業成功の大きなポイントだ。
しかし、現実的には、事業の成否というものは、情報そのものより、それを判断する人の思いやスタンスに大きく左右される。
エムエム総研においても過去に何度も新しいサービスをリリースし多くの失敗を味わってきた。「事業を成功に導く必勝法」をお伝えできればいいのだが、それはまだ見つけられていないので、今回は、陥りやすいポイントを紹介しよう。
事業を失敗に導く3つの思い込み
新規事業を推進する上で、マーケターが陥りやすいのが下記の3つの思い込みである。
- 自分で考えた仮設に対する思い込み
- 一部で起きた現場体験に関する思い込み
- 特定の前提条件に関する思い込み
自分で考えた仮説に関する思い込み
そもそも新しいサービスや事業は、「こういったサービスをこのマーケットにこうやったアプローチすれば売れるはずだ」という仮説に対する思い込みからスタートする。
これ自体は当然の事だし、悪いことではない。
ただ現実にはその仮説の通りに事業が成功するパターンをほとんどなく、何かしらの修正を加えて初めて成功パターンが見えてくる。
最初の仮設を立てた本人はどうしても、その仮説を成功させたくなる。
目の前に起こるいろいろな事象の中から、その仮説に合う事実だけに目を向け、その仮説に反する事実には目を背けようとする傾向になる。
一部で起きた現場体験に関する思い込み
これは①のケースとも同時に起こるが、マーケティングや初期の営業で起きたエポックな事象に大きな影響を受けることで起こる思い込みだ。
マーケティング的には、もっと多くのサンプルが必要なはずなのに、初期に起きた事象が自分の考えとフィット感が強いと、それをすべての事象に通じる原理原則のように思い込んでしまう。
③特定の前提条件に関する思い込み
立てた仮設がそもそもある「特定の条件」のもとであることが前提であるのに、いつしかそれが全てのことに通じることと思い込んでしまうことである。
例えばその想定ニーズの相手が経営者の場合に起こり得ると仮設を立てていたのに、ターゲットが一般の管理職などに変わっても通じるものだと思い込み、それをそう思わないのはターゲットの方に問題があると考えてしまうようなケースだ。
客観性を持つ勇気
これらの事象は現場でマーケティングを行う場合にはよく起こり得ることだが、いずれも客観的な第三者の意見を尊重することで、ある程度は回避できると思う。
経営トップが自らマーケティングの責任者をやる場合や、その事業やサービスの発案者が自らマーケティングを行う場合は、客観性を自ら担保することが難しくなる場合が多い。
そういった場合は、勇気をもって客観的なメンバーをチームに入れ、その意見に耳を傾けることが重要だ。