未経験から始めるインサイドセールス、早期戦力化のヒント【後編】
近年、リスキリングによる配置転換やDX化を背景に、インサイドセールスに取り組む企業が増えています。しかし、「思うように人材が育たない」「育てるためのノウハウがない」「スキルや経験はあるのに、インサイドセールスで成果が出ない」といったお悩みはありませんか?
今回は、インサイドセールス従事者向けには、インサイドセールスを経験することのメリットと現実について。管理者向けには、未経験から始めたインサイドセールス人材が早期に成果を出すためのヒントを、前後編でご紹介します。
目次[非表示]
- 1.前編のおさらい
- 1.1.インサイドセールス従事者が実際に感じる悩み
- 1.1.1.インサイドセールスの活動意義がわからない、モチベーションが上がらない
- 1.1.2.営業活動に対する不安など悪い印象がついてしまった
- 1.1.3.マーケティング部門やフィールドセールスとの板挟みにあう
- 1.1.4.正解がない活動に不安になる
- 1.2.これらの悩みに対する改善ポイント
- 1.2.1.組織におけるインサイドセールスの役割と成果軸を定義する
- 1.2.2.インサイドセールスの施策目的とトスアップ条件を他部門としっかりと握る
- 1.2.2.1.部門間の理解
- 1.2.2.2.トスアップの条件設定
- 1.3.管理者や組織内におけるインサイドセールスの役割の理解
- 1.3.1.インサイドセールスとテレアポの違い
- 2.管理者・組織が整備しなければならないこと
- 2.1.従事者への支援と環境整備
- 2.1.1.従事者への支援と環境整備
- 2.1.2.研修と教育
- 2.1.3.定期的なフィードバックを実施
- 2.1.4.相談体制の整備
- 2.2.一緒になって前向きに取り組む組織作り
- 2.2.1.柔軟な対応力
- 2.2.2.成功事例の蓄積と共有
- 2.2.3.日々の活動記録の蓄積
- 2.3.実践的なスキルが身につく、インサイドセールスの研修プログラム
- 3.まとめ
今回はインサイドセールス管理者向けの後編です。 前編はこちらのリンクからご覧ください。
前編のおさらい
インサイドセールスは、新卒社員や営業未経験者の配置転換として多くの企業で採用されるようになりました。
インサイドセールスを経験するメリットとしては、活動量と経験を積みやすい点や、商材や業界への理解が深まる点があります。
しかし、実際の業務では「非・成功」行動の多さや目立たない成功、業務の変動幅の狭さ、孤独な個人戦といったインサイドセールスの辛い現実も存在します。
今回の管理者向けの後編では、従事者が抱えている悩みをケアしつつ、どのようにマネジメントすべきかについて紹介していきます。
インサイドセールス従事者が実際に感じる悩み
インサイドセールスの辛い現実を紹介しましたが、実際に従事者はどのような悩みを抱えているのでしょうか?よくある悩みの一例を紹介します。
インサイドセールスの活動意義がわからない、モチベーションが上がらない
インサイドセールスという職種の価値を正しく伝えられていないと、従事者もこの業務を続けていいのか不安になり、モチベーション低下につながりやすくなってしまいます。
インサイドセールスがどういった職種なのか、どういった成果を求めるのかについて、従事する際にはその定義を必ず共有しなければいけません。
営業活動に対する不安など悪い印象がついてしまった
インサイドセールスに対して悪い印象がつきやすい理由の一つに、電話でのコミュニケーションがメインとなることが挙げられます。
また、ナーチャリング(顧客育成)という役割のため、顧客の温度感がまだ低い方と会話をすることがほとんどです。営業電話だとあしらわれ、冷たい対応をされることが多いです。
そのような環境が多いため、架電量は十分に得られたとしても、トスアップという成功体験を積む機会が少ないといえます。
それゆえに、冷たい対応が続くことや結果が出ないことへのストレスにより早期退職してしまう、ということはよくある声として挙げられます。
マーケティング部門やフィールドセールスとの板挟みにあう
見込み顧客の獲得はマーケティング部門、トスアップ後の商談はフィールドセールスが担当する分業制のインサイドセールス組織が多いと思います。そのような場合に起こりやすいのが、組織間の板挟みです。
マーケティング部門からは「獲得した顧客は無駄にしないように育成をしてほしい」、フィールドセールスからは「商談の成功率が低い顧客をトスアップしないでほしい」。
これらは一例ですが、このような意見に挟まれ、インサイドセールス従事者が活動方針に悩んでしまう、といったことはよくある声として挙げられます。
正解がない活動に不安になる
マーケティング部門やフィールドセールスのように、目に見える正解というのが分かりづらいです。見込み顧客獲得や受注獲得といった、確実に数字で表れるものと違い、インサイドセールスの成果ははっきりとわかるものではありません。
また、インサイドセールスには確立したノウハウがなく、製品や顧客の業種によって戦略は様々なため、日々模索していかなければなりません。正解がない活動のため、このような模索に前向きに取り組めるマインドが求められます。
これらの悩みに対する改善ポイント
前項で挙げた悩みに対し、どのような改善ポイントがあるでしょうか?
ひとつ問いかけたいのは、これらの課題は従事者に問題があるのでしょうか?いいえ、実際には管理者や組織にある場合が多いことをお伝えします。
組織におけるインサイドセールスの役割と成果軸を定義する
組織としてインサイドセールスに求めている役割は何か、どのようなものを成果として考えているのか。それらを明確にし、従事者に共有する必要があります。
不安の解消
インサイドセールスという新しい職種を担当することに不安を感じる従事者も多いです。その不安を解消するために、適切な説明や仕組み、環境づくりを行うことが管理者には求められます。
明確なKGI
インサイドセールスのKGI(Key Goal Indicator)として設定されるのは商談創出(トスアップ)です。重要なのは、商談化に至るプロセスやトスアップの条件をどのように設定するのかです。
例1:ナーチャリングを重視し、BANTC情報をしっかりと引き出し、長期的に精査していく
例2:フィールドセールスの商談数を増やすために短期的にトスアップを増やす
これは商談化というゴールは同じですが、活動内容としては真逆です。このように、活動戦略をしっかりと設計した上で従事者に共有をすることで、組織として目標に向かって活動する一体感やモチベーション維持につながります。
また、商談獲得難易度が高いサービスであれば、BANTC情報の獲得を小目標として設定し、小さな成功体験を積ませる工夫も有効です。
インサイドセールスの施策目的とトスアップ条件を他部門としっかりと握る
こちらで説明した内容を、マーケティング部門やフィールドセールスともしっかり共有することが重要です。
部門間の理解
マーケティング部門は、獲得したリードがどれだけ商談に進んだかを重視するかもしれません。
フィールドセールスは、商談数や受注数を重視するかもしれません。
これらの数が不足している時、インサイドセールスが責任を問われやすい立場にあります。
例えば、「インサイドセールスが商談まで進めてくれないから」「インサイドセールスのトスアップの精度が低いから」などです。
このように責任を押し付けられやすい、板挟みの状況に陥りやすい立場なのです。
これは従事者個人の力だけで解決できる問題ではなく、部門間の力関係や連携が大きく関わってきます。
もし自社がこのような状況にある場合は、今すぐに改善すべきです。
トスアップの条件設定
改善に必要なことは、部門間でトスアップの条件を明確にすることです。
インサイドセールスは、顧客との関係構築を図りながらBANTC情報などをヒアリングし、ナーチャリング活動を進めます。
そのため、マーケティング部門には、獲得したリードがすぐに商談可能な状態ではないことを理解してもらう必要があります。
フィールドセールスには、どの程度のBANTC情報が得られればトスアップが可能かを明確に設定する必要があります。
設定を行った後、「商談はできるけど受注の精度が低い」場合はトスアップ条件をより厳しくする。「まずは商談数を増やしていきたい」場合はトスアップ条件を少し緩める。このように、インサイドセールスとフィールドセールスが施策を進める中で、PDCAサイクルを回しながら条件を調整することが理想です。
このように整備されることで、インサイドセールス従事者も基準に基づいたトスアップができるようになり、精度がぶれずフィールドセールスにとっても質の高い商談を創出できます。
管理者や組織内におけるインサイドセールスの役割の理解
組織内でインサイドセールスの役割が正しく理解されていない場合、特に管理者や上層部の認識がテレアポと混合している場合、致命的なミスマッチが発生します。
テレアポの特徴は、電話を通じてサービスの販売やアポイント取得を目指し、短期的な売上を目指します。テレアポはコール数と売上によって評価され、短期の成果が求められます。一方で、インサイドセールスは顧客との長期的な関係構築やニーズに基づいた提案を重視するため、テレアポとは真逆の活動です。
このような特徴の違いを理解していないと、管理者がインサイドセールス従事者に大量のコールを求めてしまい、その結果として従事者に過度な負荷がかかり、長期的な関係構築もできず効果的な営業活動が妨げられるという失敗例は多くの企業で見受けられます。
そのため、インサイドセールスの取り組みを成功させるには、従事者、管理者、組織全体の目線を一致させることが非常に重要です。
インサイドセールスとテレアポの違い
項目 |
インサイドセールス |
テレアポ |
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目的 |
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アプローチ |
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評価基準 |
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スキルセット |
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顧客体験 |
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管理者・組織が整備しなければならないこと
インサイドセールスが効果的に機能し、従事者が高いモチベーションを持って活動できるようにするためには、管理者や組織が以下のポイントを整備する必要があります。
従事者への支援と環境整備
インサイドセールスが効果的に機能し、従事者が高いモチベーションを持って活動できるようにするためには、管理者や組織が以下のポイントを整備する必要があります。
従事者への支援と環境整備
インサイドセールス従事者が活動で悩んでいることに対して、しっかりとメンタルケアできる環境や、スキルアップにつながる学習機会を提供することが大事です。
研修と教育
従事者に対して、定期的な研修や教育を実施します。商材知識や顧客の業界知識、セールススキルの向上を図るためのプログラムを提供します。新卒や未経験者を登用しているのであれば、最初のオンボーディングだけでなく、定期的に研修機会を提供し、実務以外にも成長を感じられる環境を用意することが重要です。
定期的なフィードバックを実施
定例会を適宜実施し、インサイドセールスの活動意義や成果を定期的にフィードバックします。また、組織全体の成果の共有を行うことで、従事者が自身の貢献を実感できるようにし、モチベーションの向上につなげます。
相談体制の整備
1on1などを実施し、従事者が悩みや不安を相談できる体制を整備します。特に、インサイドセールス組織が新しい場合や少人数の場合、新卒や未経験者に対しては、管理者が積極的にサポートする姿勢が重要です。
メンター制度を取り入れるのもおすすめです。メンターとは、経験豊富な従事者が、知識やスキルなどの面で業務のサポートを行う役割を指します。未経験者が抱える業務上の疑問や不安を解消する存在として重要な役割を果たし、成長の促進や自信を深める助けとなります。
また、近年増えてきた在宅勤務環境では、コール活動以外で人と話す機会が少なくなりがちです。業務以外の面でも、従事者が話したいことや聞いてほしいことに耳を傾けると、管理者との信頼関係が深まり、チームで働いている感覚を得られやすくなります。
一緒になって前向きに取り組む組織作り
インサイドセールスは正解がない活動だからこそ、管理者も一緒に悩み、考えることが必要です。
柔軟な対応力
インサイドセールスには確立されたノウハウがないため、柔軟な対応力が求められます。日々の活動を通じて得られるデータやフィードバックを基に、従事者と管理者が一緒に考え、常に最適な戦略を模索します。
成功事例の蓄積と共有
成功事例や失敗事例を組織全体で共有し、インサイドセールスのノウハウを蓄積します。これにより、従事者が事例を参考にし、前向きに施策に取り組めるようになります。
また、ヒアリングで得られる情報以外にも、実際に顧客で対話したことでしか得られない従事者の所感も貴重な情報です。それらの情報も蓄積できるようにし、必要であればトスアップ時にフィールドセールスにも共有できると尚良いでしょう。
日々の活動記録の蓄積
最適な戦略を立てるためには、日々の活動記録をしっかりと残しておくことが必要です。
1日何回架電をしたか、そのうち何回顧客本人と会話できたか、そのうち何回BANTC情報に関するヒアリングができたか、何回トスアップができたか。
これらの活動記録を基に、従事者が課題にしている点や改善できる点を洗い出し、目標を明確にすることで、従事者にも納得感のある目標設定が可能になります。
また、ヒアリングした情報をデータベースとしてまとめ、顧客の傾向を把握し、施策の改善に役立てることができます。
以上のポイントを整備することで、インサイドセールスが効果的に機能し、従事者が高いモチベーションを持って活動できる組織を構築することができます。
実践的なスキルが身につく、インサイドセールスの研修プログラム
前項では、管理者が行うべきインサイドセールスの環境整備について説明しました。
しかし、インサイドセールスの環境を整備するまで手が回らない企業も多いのではないでしょうか?
また、どのように研修をすれば良いかわからないというお悩みもございませんか?
弊社エムエム総研では、インサイドセールス未経験の方に特化した研修サービス「デジタルセールス・アカデミー for Biz」を提供しています。
個社別カスタマイズ型の実践的研修・トレーニング支援サービスですので、貴社の人材状況と課題に応じたカリキュラムを作成いたします。
また、座学研修だけでなく、実践トレーニングやスキル・パフォーマンス診断まで行いますので、学びを実践につなげる実行力を高めることができます。
ぜひ研修サービスを活用し、インサイドセールス組織の環境構築にお役立てください。
まとめ
前後編にわたり、インサイドセールスの課題とその解決策について紹介してきました。インサイドセールスに取り組む企業が増える中、その成功には管理者と従事者の双方が理解し合い、協力することが不可欠です。
インサイドセールスの役割とその重要性を理解し、従事者の不安や悩みに寄り添い、適切な支援を提供することが、彼らのモチベーションとパフォーマンス向上につながります。研修や定期的なフィードバック、相談体制の整備、そして組織全体での成功事例の共有など、具体的な施策を通じて、インサイドセールスが効果的に機能する環境を整備することが求められます。
インサイドセールスの従事者も管理者も、ともに成功体験を得られるようにするために、ぜひ本ブログを参考にしていただき、人材育成や環境整備を進めてみてください!