せっかくのリアル営業機会を縁に変えられるか?
年始という事もあり、新年会など “業種や会社を超えた出会いの機会”が増える時期ですね。「いつもの行事だから、なんとなく」出席する方、「せっかくだから思い切り営業をしよう」と意気込む方、いろんな出席パターンがありそうですね。
今回のお話は、その中間くらい。“直接営業をしたのではないが、めぐりめぐって仕事が来た”というお話です。
「何かあったらよろしく」で終わってしまうのはなぜ?
Hさんは現在34歳、ある中堅クラスのホテルの営業マンです。
宴会やパーティ、研修や会議のお客様を増やすのがHさんの仕事。
今までは、古くからの馴染みのお客さんだけで採算が取れていたのですが、競合も増えてより積極的に営業していこうということで、サービス部門から急遽営業マンに抜擢されました。
Hさんは仕事柄、地域の会合や異業種交流会、勉強会などに積極的に参加しています。
そしていつも、「なんとか仕事にもつなげたい」と思って、たくさんの人に盛んにホテルのPRをしています。しかし、なかなか商売にはつながらず、名刺を交換して「何かあったらよろしくお願いします」と言っておしまい、ということが多いのです。
後日あらためて「先日はどうも」と電話をかけたり訪問したりしても、「うーん、今のところ予定ないしねー」と言われてしまう。
“やっぱりこういう会で営業しようというのは難しいのかな?”と思い始めていました。
「大変なんだよ」という愚痴を聞いて
その日は、ある異業種交流会の新年会に出席しました。
居酒屋チェーンの社長もいれば、IT会社の社長もいるし、運送会社やOA販売会社…いろんな顔ぶれが大集合して、まさに“異業種交流”という感じでした。
たまたま隣の席に座ったのは、建設工事会社の50歳くらいの社長。ちょっとヒアリングしたところ「研修」も「宴会」もニーズはなさそうなので、かえって気負いなく話せたのかもしれません。いつになく、自己PRは控えめに、相手の話をじっくり聞きました。
競合が激しく元請けからコストダウンを要望されて、利益が減っていること。
今までは“仕事が来るのを待っていれば良かった”が、今後は積極的に営業しなくてはならないこと。昔からの印刷屋さんにチラシや広告を作ってもらっているが、反響も今ひとつ。ネット広告もやってみたいが、何をどうしてやっていったらいいのかわからない…。そんなグチのような、相談のような話を「大変だな」とうなずきながら聞いていました。
そして、たまたま前の晩久しぶりに会った、友人のことを思い出したのです。
なんとなく縁を取り持った形になって
その友人は、11年勤めた広告代理店を退職して、先ごろ小さなネット広告制作会社を設立しました。
オフィスはたまたま近くにあり、「これからはちょくちょく会おうな」なんて言っていました。
彼の悩みはというと、会社をスタートしたはいいけど、自社の強みをわかってくれる顧客がすぐにみつからず、なかなか苦戦を強いられているようでした。
「この2人を会わせたらどうだろう?」とHさんはひらめいたのです。
さっそく友人の名刺を取り出して、「社長、私の友人で、広告の会社をやっている者がおりますので、もしよろしければ、一声かけてやってもらえませんか?しっかりした奴だから、いい仕事すると思うんです。オフィスも社長のところに近いようですし」と紹介。
なんだか、友人の会社の営業マンになったような気分でした。
結局、社長と友人は意気投合したらしく、仕事の方もとんとん拍子で進んでいるよう。「自分のホテルの営業はできなかったけど、こんな風に人の役に立ててよかったな」とHさんは思いました。
めぐりめぐって仕事が来た
このお話には後日談があります。
ある日「この前はありがとう」と、Hさんを名指しで電話が入ったのです。
あの工事会社の社長さんでした。地域の工務店いくつか合同で新年会をやるので、ホテルYを利用してみたいとのこと。Hさんは大感激です。
「絶対満足してもらって、今後も利用してもらえるようにがんばろう」ひそかにそんな決意をしました。
「直接PRをする事や、宴会の予定ありません?と聞いてまわることだけが営業じゃないんだな。
こんな風に縁がめぐって仕事が来ることもあるんだな」…そんなことを感じたHさん。
このうれしい事件以降は、どんな会に出かけていっても、自分のホテルの「営業」だけをするのではなく、相手の困っていることを「聞く」ことを心がけ、「何か役に立てることはないかな?」と考えるのが習慣になりました。
勉強会・交流会・飲み会等々、「商売につなげたい」「仕事が欲しい」という気持ちで行くと、どうしてもその他の話題が出なくなります。そして、たいていは「名刺交換しておしまい」になりがち。
自分を売り込む前に、「相手のために役に立つことはないか?」を考えて、行動する。直接の仕事以外のつながりを持つことで、関係が切れてしまわないように大切にしていれば、いつかめぐりめぐって自然と仕事につながっていくこともあるのではないかと思います。
以前私が営業マンの第一線として働いていたときに、業績が上がらないで悩んでどうやって動いてよいかわからなくなっているときに、上司から「売ろうとするから行動が見えなくなるんだよ。
お客様の困っていることに応えようと思えば、無限にやれることはあるんじゃないの?」と言われたことがあります。
自社のPRや短期的な受注だけが頭の中にあると、どうしても引き出しがせまくなってしまい、お客様の本当の課題を見逃すことになりがちです。
もちろんすべてのお客様にという訳にはいかないでしょうが、生涯顧客価値が高く、ポテンシャルの可能性のある見込み客には自社の営業に直接つながるかどうかではなく、顧客のためにという視点で複数のネットワークから情報提供することで関係性を作っていけるのではと思います。